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「――ただいま」
真っ先に帰宅したのは陽大の家だった。
葉月のことは家へは送らなかった。
独りになりたいと言われて、それでも送っていくと言い張れるほど、俺は紳士でもない。
「…おかえり。
遅かったね」
リビングのソファでテレビを見ている陽大が俺を振り返る。
そのまえのローテーブルにはコーヒーが置いてあった。
「夕食できてるの?」
「うん。
そこのテーブルに置いてある、生姜焼きお前の。
どうせ来るだろうと思って」
「どーも」
テレビとソファが置いてあるとこから一メートルくらい離れたとこに置いてあるダイニングテーブルの上にラップをして取ってある。
俺は炊飯器からご飯を装うとダイニングテーブルの椅子に座った。
陽大はソファから動かないでテレビを見ている。
いつもなら、自分の食事が終わっていてもテレビを消して、こっちの椅子に座るのに。
「……陽大、来ねーの?」
「…何が?」
「こっち。
つか、なんで怒ってんの?
俺が楓とデートしてきたことに妬いてるわけ?」
陽大が俺の方を向く。
困ったように眉をひそめて、しょうがないな、とこちらへ来るものだと思っていたけれど、陽大の目は本気で怒っていた。
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