Wind.01

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「――ただいま」 真っ先に帰宅したのは陽大の家だった。 葉月のことは家へは送らなかった。 独りになりたいと言われて、それでも送っていくと言い張れるほど、俺は紳士でもない。 「…おかえり。 遅かったね」 リビングのソファでテレビを見ている陽大が俺を振り返る。 そのまえのローテーブルにはコーヒーが置いてあった。 「夕食できてるの?」 「うん。 そこのテーブルに置いてある、生姜焼きお前の。 どうせ来るだろうと思って」 「どーも」 テレビとソファが置いてあるとこから一メートルくらい離れたとこに置いてあるダイニングテーブルの上にラップをして取ってある。 俺は炊飯器からご飯を装うとダイニングテーブルの椅子に座った。 陽大はソファから動かないでテレビを見ている。 いつもなら、自分の食事が終わっていてもテレビを消して、こっちの椅子に座るのに。 「……陽大、来ねーの?」 「…何が?」 「こっち。 つか、なんで怒ってんの? 俺が楓とデートしてきたことに妬いてるわけ?」 陽大が俺の方を向く。 困ったように眉をひそめて、しょうがないな、とこちらへ来るものだと思っていたけれど、陽大の目は本気で怒っていた。
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