Wind.01

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「そっか。 分かんないんだ、椿には」 呆れた風にハッと陽大が笑う。 そして、首を傾げると俺を見ながらゆっくりと、言い聞かせるように言った。 「俺はー、怒ってるのー」 「わかるよ。 そのぐらい」 「わかってねぇよ!」 陽大がバンッとローテーブルを強くたたいた。 その勢いで、置いてあったコーヒーカップがガシャンと音を立てて一瞬宙を飛ぶ。 「なんでわざわざ、お前に楓を譲ったと思ってるんだよ。 楓に告白する勇気がないからだとでも、思ってる? だったら、今日、俺告白してきたよ。 最悪に不毛な状況で、めちゃくちゃ不利な賭けしたよ」 陽大はソファの背もたれに上半身全体を預けた。 ソファのスプリングがギシッと音をたてる。 「俺は。 ……俺は、ずっと葉月に振り回されてる椿を見るのがイヤだった。 葉月に玩具みたいに扱われて、でもそれでも椿は葉月が好きで、それで苦しんでるお前が可哀想だった。 葉月を、忘れてほしかった。 楓だったら椿の心を埋めてあげられる自信があった。 だから、俺はあきらめたんだよ」 俺に向けられた目は怒っている、というより寂しそうだった。 失望されているような、そんな気持ちにさせられる目だった。
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