Wind.01

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「椿も少しずつ楓に心を開いていって、それを見るたびに、これで良いんだって何度も何度も言い聞かせてきた。 でも、全然良くなかったよ。 椿は、葉月と同じ道を辿った」 「…同じ?」 「愛されるのが、嬉しくて気持ちよくなっちゃったんだよ。 そうだろ?」 見透かされて、そしてあざ笑うような顔でそれを言われて、じりじりと迫られているような気がした。 違う?と笑いかけられているのに、威圧を感じる。 「椿は知ってるはずだよ? 追いかける苦しみも、振り回される痛みも。 でも、椿はそれがどれだけ深い愛情なのかも知ってる。 だからもっと欲しくなった」 「……」 「でも、楓はお前の所有物じゃないんだよ!! 気持ちがあって、お前が好きで、そのたび傷ついてるんだ!」 それだけ言い放つと、陽大はソファから立ち上がった。 ソファの背もたれに手をかけて、出入り口を目指す。 その姿で我に返ったように、 「どこ、行くんだよ」 と反射的に聞いた。 「寝る。 話はこれで終わり」 陽大はそれだけ言い放って、こちらを振り返ることもしないまま歩き出した。 扉のドアノブに手をかけ、ふと立ち止まる。 そしてそのドアノブに睨んだまま、言った。 「…椿が変わったように、楓も変わるんだからな。 せいぜい後悔すればいいよ」 ドアがすぐに開き、バタンと閉まる。 俺は陽大が行った後も、そのドアから目を離すことができなかった。
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