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「てかさー、梶の元カノって結構普通の…、っと。
噂をすれば、なんとやらってやつ?」
阿部の方に視線を戻すと、阿部が俺を通して後ろを見ながら言う。
振り返るよりも先に、
「椿」
トン、と肩をたたかれて、俺は至近距離で陽大を見た。
「……お、はよ」
思わず声が上ずった。
まさか陽大が俺に声をかけてくるとは思ってなかった。
昨日は本気で怒っていたからシカト決め込んでいるんだと思っていた。
「もう昼だけどね。
それより、お前、俺のこと50メートル指名したでしょ。
おかげで走らなくちゃいけなくなったよ」
「えぇ!マジかよ、椿。
梶はウチのクラスで一番速いぞ!?」
阿部が驚いた目で俺を凝視する。
夏の生ぬるい風が、砂埃を連れて俺にぶわっと被さった。
「知ってるよ」
陽大は表情一つ変えずに俺を見ていた。
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