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「なに?」
「賭けをしようか」
「…は?」
怪訝な顔をむき出しに陽大を見る。
昨日はすげーイライラしてたくせに、今日はずいぶん機嫌がいい。
陽大はニッと俺に笑った。
「俺が勝ったら俺が楓にふられる。
椿が勝ったら椿が楓にふられる。
どう?」
「すげぇネガティブだと思うよ。
つーか、俺はふられないし。
それに、その賭けふつうは逆だろ」
「うん。
でも、俺は椿のために走れる自信あるな。
椿はどう?」
「そんなの意味ないと思う」
一蹴して、――でも、思う。
たぶんこれが、こんな無意味な願掛けなんかじゃなく、確かに結果が伴うものだとしても陽大は走ると。
俺は走るだろうか。
陽大のために、走るだろうか。
『――陽大ってカッコイイよね』
葉月が陽大に告白する少し前くらいに言っていた言葉を思い出す。
葉月は俺じゃなくて陽大に惹かれた。
ずっと俺たちのそばにいた葉月は陽大を選んだ。
――俺も、そう思う。
多分、俺よりずっとヤツはカッコイイ。
50メートル向こう側で、先生が手をあげた。
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