Wind.02

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「なに?」 「賭けをしようか」 「…は?」 怪訝な顔をむき出しに陽大を見る。 昨日はすげーイライラしてたくせに、今日はずいぶん機嫌がいい。 陽大はニッと俺に笑った。 「俺が勝ったら俺が楓にふられる。 椿が勝ったら椿が楓にふられる。 どう?」 「すげぇネガティブだと思うよ。 つーか、俺はふられないし。 それに、その賭けふつうは逆だろ」 「うん。 でも、俺は椿のために走れる自信あるな。 椿はどう?」 「そんなの意味ないと思う」 一蹴して、――でも、思う。 たぶんこれが、こんな無意味な願掛けなんかじゃなく、確かに結果が伴うものだとしても陽大は走ると。 俺は走るだろうか。 陽大のために、走るだろうか。 『――陽大ってカッコイイよね』 葉月が陽大に告白する少し前くらいに言っていた言葉を思い出す。 葉月は俺じゃなくて陽大に惹かれた。 ずっと俺たちのそばにいた葉月は陽大を選んだ。 ――俺も、そう思う。 多分、俺よりずっとヤツはカッコイイ。 50メートル向こう側で、先生が手をあげた。
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