Wind.02

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「あーっ、やっぱり俺が勝ったか。 奇跡はなかなか起きないね」 「…っ、そんな簡単に起きたら奇跡じゃねぇんだけど」 「でも、椿自己ベスト出たんでしょ? おめでと」 陽大が片手をあげて俺にハイタッチを求める。 額にはうっすらと汗が浮かんでいた。 「どーも」 そこに音が鳴らない程度に軽く手を合わせると、手も汗ばんでいるのが分かった。 陽大が笑う。 「賭けしたのに、必死で走ったの? 優しいね、椿」 「どっちが、だよ」 「俺が必死で走ったかどうかなんてわからないでしょ。 俺、速いんだから」 「…陽大は必死で走るよ」 まだ息が完全に整っていないせいで息が切れている。 はぁっと息を吐くと、陽大は目を大きく見開いた。 そして、困ったように眉を寄せる。 「おまえの中で俺の信頼度高くない? ずるいよ、それ」 「卑怯?何が?」 陽大は汗ばんではいても、もう息は整ったようだ。 やっぱ運動神経だけは俺のが負けてるなと自覚する。 「だって、そんなこと言われて俺どうすりゃいいの。 椿のこと益々好きになるしかないじゃん」 「好きになりゃいいじゃん」 「…あのね」
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