Wind.02

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廊下に出ると、 「勉強道具、置いてきちゃったけどいい?」 と声をかけた。 廊下に出た瞬間、静かにしている理由がなくなる。 沈黙が周りの迷惑を考えてのことから、気まずい雰囲気に移り変わる。 それが嫌で、当たり障りのない会話を投げかけた。 「…あ、うん。 いいよ、ごめん」 ポカン、とした顔の楓。 だから、あんたは『バカ真面目』なんだと言いたい。 この空気が嫌だとか感じている俺にはたぶん一切気付いていない。 そして、俺のごまかしなんて全然気にしないで、たぶん本気でぶつかってくる。 「あ、そ。 で、なんだよ話って」 だからさっさと話をふった。 楓には直球以外通用しないし、どうせどんなごまかしも意味がない。 そんな楓でも言葉を探しているのか、俺の質問に黙り込んだ。 俺が察していないとでも思ってんのかな。 やっぱり本当はバカなんじゃないかな。 そして、そういうとこ、俺はたぶん嫌いじゃない。 「もしかして、昨日のこと?」 話をふると、楓の肩がピクリと動いた。
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