第5話 【忘年会】

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「なに?その態度。感じわる~い。高瀬先生は気を使ってあげてるだけなのに。何か、意識しちゃってるとか?」 真っ赤になっているであろう、私の耳に、まるで小馬鹿にするような口調の藤森さんの声が届いた。 その声に反応して、私の頭にカッと血が上る。 「ち、違います。私は…」 「先生、私がゆず梅酒飲みま~す。あ、先生が熱燗飲んでるなら、私もその後で一緒に熱燗のもっかな~。ご一緒しても良いですか?」 私の言葉を遮り、不快な声が甘ったるく先生に絡む。 藤森さんの手が、先生の腕に触れているのが視界に入った。 「ああ、どうぞ」 先生はその手を拒むことなく、藤森さんに微笑んだ。 ―――何なんだ、これ。 何なんだ?私――。 どうしようもない疎外感に襲われ、膝に乗せた手でニットワンピをギュッと掴んだ。 「ごめんごめん!注文しに行ったついでに、そこで主任さんに絡まれてた~。あれ?ビールまだ?」 香川さんは小走りで私に近寄ると、テーブルの上を見渡す。 「…はい、まだです」 「おっかしいな~。…あっ、あれじゃない?そのビール、こっちこっち~」 店員さんに向かって、香川さんが上機嫌でブンブンと大きく手を振る。
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