第5話 【忘年会】

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この子、こんな酒乱な子だったのか…意外。 「ハハ…完全に出来上がってるみたいね」 彼女の酩酊ぶりに圧倒されながら、苦笑いを浮かべる。 ふと隣に視線を移すと、高瀬先生の姿がない。私と香川さんが話をしているうちに、席を立って他の席に移ってしまったようだ。 私が隣に来たから…ノリの悪い、私の横がつまんないから移動しちゃったの? 先輩ドクターと話をしている高瀬先生の背中を見つめ、行き場のない重いため息を落とした。 「…って、安藤さんも思いません?」 「えっ?なに?ごめん、聞いてなかった」 慌てて視線を七瀬さんに戻す。 「だから~、『職業は何ですか?』って聞かれた時に、『医療関係者です』って答えられるのって、気分よくありません?」 「…はぁ。どうなんだろ。私の場合、事務職って答えるから…」 「え~!そうなんですか~?コンパでも医療関係者って言うとウケが良いんですよ!事務は事務でも、医療事務って男の子から人気あるんですから~。安藤さんも使って下さいねっ」 「ああ…そうなんだ」 コンパって興味ないけど。って言うか、そんな歳でもない。 若いって、無邪気で良いわね。 その後、私は美味しいお鍋とビールを飲みながら、上機嫌者同士できゃっきゃと笑う七瀬さんと香川さんの横で、自分なりに頑張って宴会を楽しんでいた。
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