第5話 【忘年会】

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一次会が終わり、二次会に参加する人たちが移動を始める頃、私はややふらつく足取りでレストルームに向かった。 ああ~ヤバイ。頭フワフワする。香川さんと七瀬さんに、見事に飲まされた。 排尿してる感覚も鈍い。紙で拭いてる感触も鈍い。 ああ~眠い。 早く家に帰って、温かい布団で今すぐ眠りたい。 七瀬さんも帰るって言うし、香川さんには悪いけど二次会はお断りして私も帰ろう!二次会のお金、もったいないし~。 「よし!帰ろう!」 何やら訳の分からない気合いを入れて立ち上がる。 緩慢な動作で身だしなみを直し、扉を開けようとしたその瞬間、レストルームと廊下を繋ぐ扉が開かれる音と、聞きなれた数人の声が聞こえ、私は思わず手の動きを止めた。 「ねえ、二次会はカラオケ組に行く?飲み直し組の方に行く?」 「どうしよっかな~。飲み直しって、上の先生ばっかりじゃない?カラオケのが盛り上がりそうだよね~」 聞こえて来たのは、二十代後半のスタッフの声。 「私は、高瀬先生が行く方にするから」 そして、藤森さんの声…。 「藤森さん、ずっと高瀬先生の横をキープしてたじゃないですか~。結構、いい雰囲気でしたよ~」 声に混ざって、化粧ポーチらしき物を開けるファスナーの音と、カチャカチャと小物がぶつかり合う音が聞こえる。 どうやら用足しではなく、二次会に向けて三人でお色直しをしに来たらしい。
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