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「ちょっと~藤森さん、それって言い過ぎですよ~。それに、安藤さんはそんな感じじゃなかったし」
「そうそう、安藤さんは存在を感じないくらいに静かだから害はない。いつもそうだけど、スタッフと仕事以外の話はしづらい雰囲気あるよね。大人し過ぎるって言うか…」
フォローに入ってくれたスタッフの一人が言葉を濁した。
存在を感じないくらいに静か…話しづらい…大人し過ぎる…か。
…別に、良いじゃない。それで。
その【害のない】生き方をしていこうって、そう決めてここに逃げて来たんでしょ?
誰も私を知らない土地で、誰も私を見張らない場所で、ひっそりと静かに過ごしたいって、そう望んだのは私じゃないの。
沸き起こる悲愴な感情を押し殺そうと、大きく息を吸い込んだ。
「私、安藤さん見てるとなんかイラッとするのよね。陰気くさい感じがイヤ。まあ、ストレスぶつけるには良いカモだけどさ~」
「も~、藤森さん酷いですよそれ。完全にイジメじゃないですか~」
「ウザイものはウザイんだから仕方ないじゃない。あの派遣事務員、二次会に来るのかな。もし来たら、泣くまでイジメてやりたいわ!」
「藤森さん怖~い!私、藤森さんが行かない方の二次会に参加しますぅ~」
音のない閉ざされた空間に、三人の笑い声だけが響き渡る。
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