第5話 【忘年会】

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12月13日。 今夜は、医者、看護師、他病棟関係者が約50名出席する病棟忘年会。 和食を主とした名店の広々としたお座敷。 掘りごたつテーブルには、新鮮な刺身の盛り合わせ、湯葉豆腐、鳥のささみの燻製サラダ、ズワイガニの天ぷら、手ごねつくねの串などの、色とりどりの料理が並ぶ。 そして、テーブルの中央を陣取る名古屋コーチン鍋は、グツグツと煮汁を立ててコースメインであるその存在をアピールしている。 ああ~このお刺身美味しいぃ~。スーパーの解凍ものと全然違う! 何だろ!?この鰤の歯ごたえは!鮮魚ってこんなに身が締まってて美味しかったのか~。幸せっ。 5000円の会費の元を取らねば!と、日頃お会いできない豪華な料理とお酒を次々と胃に詰め込む。 派遣クラークの七瀬さんと看護師の香川さん以外は、あまり親しいスタッフのいない私。 「ドクターとナースが大勢いる飲み会は緊張するから、安藤さんずっと私の隣にいて下さいね!」と言っていた、日陰族仲間の七瀬さんは、会場の隅っこに私を一人置いてきぼりにして、いつの間にか日向族の方々のテーブルに入り込み大はしゃぎ。 二十二歳、七瀬あずみ君。怖い者無しでお局ナース達をも蹴散らす、キミの若さ溢れるパワーに乾杯! 後で、怖いお姉さま達に意地悪されなきゃ良いけど… 後々の彼女の安否を心配しながらも、大勢がいる宴会がもともと苦手な私は彼女の救出に向かう勇気もなく… まっ、本人が楽しそうだからいいか~。 一番人気の若手ドクターにべったりくっつきながら、ほろ酔い状態で上機嫌な笑みを放つ彼女を見守りつつ、上座へと視線を伸ばす。
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