第5話 【忘年会】

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私の心を見透かすような、澄んだ栗色の瞳。 私の心を引き込もうとしないで…やめて…そんな目で、私を見ないでっ! 「別に、拒絶なんてしていません。ただ…もう、やめて下さい。優しくしないで下さい…」 戸惑う唇が、言葉を絞り出した。 「…どうして?」 「どうしてって…困るからです」 「どうして困るの?」 「……」 私を捕らえる、微動だにしない彼の視線。 ――見つめられるほどに、胸が苦しくなる。 「それは…迷惑だからです。…先生のファンのスタッフ達に、睨まれます。だから、二次会に戻って下さい。…お願いします」 彼から視線を外し、途切れ途切れに苦しい言い訳を並べた。 二人の間に流れる沈黙。 逸らした視線の先には、居酒屋から出て来た数人の若者たちが、赤い顔をして上機嫌で騒ぎ立てている。 「嫌だ。あんたがそう言うなら、二次会には戻らない」 「はっ!?戻らないって…」 予想外の先生の返答に驚き、目をまん丸くして彼を見上げる。
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