第5話 【忘年会】

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「いたいた~!安藤さん、なんで一人でこんな隅っこにいるの?」 会に誘ってくれた香川さんが、片手にグラスを持って隣にやって来た。 「あ、香川さん。幹事お疲れさまです。そのワンピース、素敵ですね」 胸もとにフリルの付いた、サーモンピンクのワンピースを可愛らしく着こなす彼女を見てニッコリ笑う。 「本当!?嬉しい~。ちょっと若作りし過ぎかなって思ったけど、こんな場所でしか思いっきりお洒落する機会無いでしょ?だから思い切って着ちゃった」 香川さんは、アルコールで火照った頬を更にピンク色に染めて「ふふっ」と甘く笑う。 三十代のフリルのピンクも、彼女が着ればとてもキュートでエレガントに映し出される。 「若作りになんて見えません。そんな風になんでも着こなせちゃう香川さんが羨ましいです」 心の底から、そう思う。 「安藤さんのそのニットワンピも素敵。スレンダーだと、ニットが上手に着こなせるから羨ましい。私が着たら上半身デブになっちゃう」 「いえ、そんな事ないですよ…」 それは、香川さんがグラマーだからであって… ペテン下着のお世話になっている自分の胸もとにちらりと視線を落とし、苦し紛れの笑みを浮かべた。
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