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「父さーん。今日の夕飯、カレーでいいー?」
いいかどうかと聞いておきながら、既に玉ねぎにじゃがいも、人参とカレーの具材を切り始めている私。
もはや其処に、カレー以外の選択肢など許さない。
台所に立ちながら少し大きめの声で問う私に、父の「任せたー」という返事が返ってきた。
おし、と父の返答に野菜を切る手を早める。
すると、何かを引き摺るような音が聞こえてきた。
何事かと振り返ってみると、リビングと台所を仕切るのれんの向こうから、腰に手を当てた父が顔を覗かせていた。
「ちょっと、ぎっくり腰で動けないんだから、無理に動こうとしないでよ。
てか動くな、私の仕事が増える」
「お、おう、すまん。
いや、でもな、愛子(あいこ)にちょっと頼みたいことが……」
「話なら後で聞くから。
今は横になって寝てなさい、てかさっさと寝ろ」
こわごわと腰を労りながらUターンする父の背中を見届けてから、次は少し前に取り出しておいた冷凍の豚肉を切った。
着々と手際よくカレーの具材を切っていき、そして今度は炒め作業へ移る。
先日掃除したばかりの換気扇が回っていることを確認して、フライパンに肉を投入して火を付けた。
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