第1話

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 私達は、父が管理するアパートの一階で暮らしながら、大家をやって生活していた。  しかし、最近は残念ながらその仕事を全う出来ていない。  ご察しの通り、その原因はぎっくり腰だ。  体を動かずに行えるような仕事なら今の父にも出来るのだが、出歩いて何かをしようとすると厳しいものがある。  少し前ならば、母が代わって色々としてくれていたのだが、長年の過労がたたったのか先月入院したばかりだ。  その為、今は代理で私が大家の仕事の一部を受け持っていた。  さっき父さんが私に頼みたいことがあると言っていたのも、恐らくはその類なのだろう。  大家という仕事も、決して楽ではない。  空き部屋があれば新しい入居者を募集しなければ赤字になってしまうし、入居者が決まってもしっかり家賃を納めてもらう為の管理もしなければならない。  建物の破損があればそれの修理の手続きをして、勿論クレームなどがあればそれも勿論受け持つ。  基本的に営業のような仕事がメインになるらしく、其処は父がやってくれていた。  だが、実際に出向かなければならない案件は、ここ最近では私に回ってくるようになっていた。
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