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斉藤くんと言えば、入学時に新入生代表として壇上に立ったことで一躍注目を浴びた、私達の学年で一番の有名人だ。
この高校一年間の中間テストでは、彼が学年一位を取るのは恒例でもある。
つまりは学年トップの天才である彼であったが、決してカチカチの優等生という訳でもなかったから、また別の意味で人気があった。
男女も学年も問わず好かれる彼は、多くの生徒達にとって憧れの存在だ。
とはいえ、そういった周囲の評価に興味のない私は、積極的に彼とコンタクトを取ろうなどと考えたことはなかった。
その為、この高校一年生の終盤に近い辺りで、初めて彼と接触するなどということになったのだろう。
「まぁ、どう思われていようと関係ないんだけどね。
ところで、仮谷さんはアルバイトでもするの?」
「え、なんで?」
「いやだって、“それ”見てたら誰でもそうなのかなって思うでしょ?」
斉藤くんの指差す先を見て、あぁなるほどと納得する。
其処には、私がついさっきまで見ていた求人広告のビラがあった。
それを見ていた理由は、単純にアルバイトを検討していたからであるが、その考えに至った理由は二つある。
一つは、学校生活にもかなり余裕が出てきたので、社会勉強の為にもバイトをしてみてはどうかと知人に勧められたことだ。
そしてもう一つが、最近母が体調を崩しがちで金銭的に少々つらくなってきたので、少しでも家計の足しになればというものである。
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