時旅

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 小さな看板を見つけたのは一月の凍えるように寒い日だった。  「時旅」とだけ書かれた古い木の看板がかけられたその店は、木製のとても落ち着いた外装で、吸い込まれるように入り口の取っ手に手をかけていた。  コロンコロンと木と木がぶつかり合う音が店内に響き、私の来客を告げた。真ん中の小さなベッドが初めに目につき、首を傾げる。  左右の壁には棚が置かれていて、小物が綺麗に並べられている。奥に扉が一つあるものの、取っ手は存在しなかった。  店内を見回してしばらくしても誰も出てこないので、思い切って口を開く。 「あの……すみません」  すると、奥の扉から綺麗な女性が入ってきた。整った顔に黒の長いストレートヘア。歳は私と同じくらいに見えるけど、子供っぽい白いワンピースを着ている。スラリと伸びる白い手足は、どこか存在感がなく、触れたら消えてしまいそうで……。
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