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場面は切り替わり、城の内部。
比較的質素とも内装で統一されているこの城には珍しく、この部屋ばかりは豪奢な装飾が施された部屋であるのがこの来賓用の応接室。
主に外交などに用いられているこの部屋。今もまさにその本来の用途通りに使われている真っ最中だった。
しかし、今日ばかりは空気が違う。同じ室内にいる者はおろか、部屋の扉のすぐ外にいるだけの近衛兵までもがひりつくような緊張に支配されていた。
「――――――――――――して、本日はどのような御用で?何の宣告もなしに突然いらしたその理由を、そろそろお聞かせ願えますか。
ブリタニア武国外務総監、ハルグレーテ殿。」
とりとめのない話から長く続いた沈黙を破り、国王カインは対面に座る男にそう切り出した。
ハルグレーテと呼ばれた男は、嫌悪感を覚えるような胡散臭い笑みを貼りつけながら大袈裟な身振りで答える。
「おおっと、これは申し訳ありません。そうですねぇ、いつまでも必要のない話ばかりしていられません。
ではそろそろ本来の要件に移らせていただくとしましょう。」
そう言うと、両腕を大きく広げてみせる。
外国の………突き詰めて言うなら敵地の心臓部でのあまりにも不遜な行い。よく見れば、両脇にいる護衛と思われる者までニタニタと笑っている。
少なくとも、外交で話をしに来た者の態度ではない。
「(東の蛮族め…………)」
カインの後ろに控える護衛役の騎士長ライナは、誰にも聞こえない音で低く舌打ちをした。
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