如月遊里はかく語りき。

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シェリルの背後からの強烈極まりない足刀が遊里の延髄を的確に捉え、遊里はたまらずもんどりをうって倒れる。 シェリルは固まるイザヴェラを横目で睨み付けると、倒れ伏す主を足を掴んで引き摺ってスキマの奥へと消えていった。 「おおう………………」 イザヴェラとその隣のレイは、いとも容易く行われる主に対する従者の暴行に顔を引き攣らせながら感嘆の声を漏らす。 そんな一連のやり取りを見ながら、やや離れた位置で少し悲しげな表情を浮かべて、何も言えないまま立ち尽くしている女性が居た。 ルディアナ=オフィーリア。 レイの悲劇の全ての、その元凶。 ここで死ぬつもりだった。彼女は今、こうして生きているべきではなく、既に死んでいなくてはならない筈だった。少なくとも彼女はそう思っていたし、それを望んでいた。 しかしそれは叶わなかった。死を以て為す罪の清算は許されなかったのだ。 本心では着いていきたい。このままあのスキマに飛び込み、一緒に過ごすことができたならどれだけ幸せだろうか。 だが当然、それは許されない。 罪にまみれた魔女は、どれだけ望もうとも幸福に向かうなどという恥知らずな真似がどうして出来ようか。 ルディアナは、死ぬことによる清算は禁じられた。生きる事を命じられた。ならば堕ちるべきなのだ。文字通りの生き地獄へと。 ルディアナは目を伏せたまま自ら導きだした結論に自嘲するような笑いを溢し、閉ざされた道に決別するかのように背を向け、闇の中へと一歩踏み出した。
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