メイドさん日記〈ダイアリー〉~まごころをドブに~

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・・・・・・・・・・・・・・・・ 王都から北東の方角へ数百キロと離れた場所。 シェリルが訪れたこの街、王国唯一の海と接した地域であるこの漁港は、辺鄙な場所とも言える立地ながら存外に栄えていた。 「…………ふぅ、便利な能力を持ちやがってるこって。」 普通の“足“を使えば数日はかかる距離だが、遊里やルディアナのような能力を使えば一瞬のこと。使えれば便利なことだが、こればかりは素養の問題なのでどうしようもない。 さっさと用事を済ませてしまおうと、シェリルは石畳で舗装された道を進んでいく。 基本的に資源が豊富な王国だが、海と接した地域が極端に少ないせいで、塩を初めとした海産物が貴重になるのだ。現にいくらかは輸入で賄っている。 製塩業、漁業、観光………ここ港町キリキアはそう言った事情から国境付近に似つかわしくない賑わいを見せていた。 ……………が、どうにも様子がおかしい。 街は賑やかというより騒がしく、どこか浮き足立っているような雰囲気を醸し出していた。 怪訝に思ったシェリルは、ベンチに足を広げてもたれ掛かっていた男に訊ねてみた。 「ああ…………?ご覧の通りさ。北の帝国の戦艦が港を占領してんのさ。武国と手を組みやがったんだ。王国の海を封鎖するつもりだ。 連中ときたら街中をウロウロしてる上に、検問までやってやがる。街から出ることもできやしねぇし、外から入ってくる人間も――――――― そういやあんた余所者かい?よく入ってこられたなぁ」 そんなことになっていたのか。とシェリルは驚いた。 何しろ道のりをすっ飛ばして街の真ん中にワープに近いことをしたのだ。検問なんて通りもしていない。 もし不幸にも街の外から入ってきていたら、門の前が打ち首獄門晒し首のゲリラライブになっていたことだろう。検問の番兵達が。
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