如月診療所にて

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如月隆は診察室で一人、カルテを整理していた。 特に驚くでもなく、振り返りもせずに長身の男に話しかけてきた。 「また裏口から勝手に入って来やがったな? 今度は何が欲しいんだ? 龍一!」 「隆、お前相変わらず元気そうだな…。 勝手口なんだから、勝手に入って来ても別にいいだろ…?」 快活な印象を与える、還暦を過ぎた白髪で短髪の医師は、毎度の事ながら呆れていた。 白衣の上からでもがっしりした体型だと容易に想像できる。 そんな筋肉の塊のような体躯を診察室の椅子に預けて、龍一を見上げた。 「別に今始まった事じゃあないがな? まあ座れよ。龍一!」 龍一と呼ばれている長身男、もぐらは患者用の椅子に腰掛けた。 「麗も居るのか?」 「ああ、今夕飯の支度をしていた。 親ながら出来た娘だよ!」 「そうか…。元気ならいいんだよ…。」 「良くねぇ!お前があいつに会わねぇとな! 毎日『お兄ちゃん』と言ってて、うるさくてかなわんからな!」 「お父さん~♪ご飯出来たよ~♪ 余計な事お兄ちゃんに言わないで?」 隆は焦りながら言う。 「悪かった、悪かった!勘弁してくれよ!」 「お兄ちゃん~♪ようやく会えた~♪ 何してたの?心配してたんだけど?」 「う…。悪い悪い。なかなか忙しくてさ…。 なるべく来るようにはしてるんだけど…。」 もぐらも形無し。
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