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「うん、じゃあアレだな」
独り言のようにぼそぼそ言うと店主はガラクタにしか見えない商品の山を引っ掻き回す。
少し、いや、けっこう待たされた後に差し出されたのは、小さな箱。
「じゃあコレください」
僕は手にも取らないままに、その箱に決めていた。
これ以上の長居がしんどくなってきていたからだ。
吹きつける風が頬を切るように冷たくなってきており、妙な焦燥感が僕を支配しつつあった。
「まいどあり」
店主がにこりとして小箱をビニール袋に入れてくれた。
『じゃあもういいですね』
ジャックが言う。
問い掛けというよりは終了の宣言だ。
僕はジャックの先導で帰路に着く。
「ところでコレ、どんなびっくりなんだろう?」
『開けてみればどうですか?』
その言葉に、それもそうだと、僕は蓋を開く。
とても飛び出たとは言えない勢いの無さで、スプリングに押し上げられたピエロの人形が顔を覗かせた。
びっくり箱だ。
『びっくりしましたか?』
ジャックが訊く。
その声には面白がっているような調子がある。
「ううん。まったく」
蓋をパタンと閉じながら、僕は正直に答える。
『ココにある物で、びっくりしないというのが一番のびっくりですよ』
「なるほど」
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