それは必然の

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俺が11歳のころ、両親が離婚した。 昔から仲が悪かった両親の元で育った俺は、離婚という現実をあっさりと受け入れることができた。むしろ、ほっとした。これで二人の言い争いを見なくてすむんだ。 幼い俺が感じたのはそれだけだった。 俺は母に引き取られ、来生(きすぎ)の姓になった。しかし、それからというもの、母は家にほとんど帰ってこなくなった。今思えば、母は憎い父との子供の俺を、あまり快く思っていなかったのだろう。 表だって嫌われていたわけでなかっただけましなのかもしれないけれど、 昔から俺は1人だった。 そして、今日。母が再婚ー… 「そっか。おめでとう。相手はどんな人?」 「…とっても素適な人よ。」 元は他人である人と、これから一緒に暮らしていくことになるのだ。 それも戸籍上では父親となる。どんな人なのだろうか。 しかし母は、俺の予想を裏切る言葉を続けた。 「ねぇ、嘉。あなた、1人暮らししたら?」
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