「月子」

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 あーもう、これだから酔っ払いは困る。    なんだよ月子って。  「はいはい、月子さん、窓、開いてたら行けるでしょ?その境の板破って。」    と隣のベランダとの境にある仕切り板を差す。      「あー!ああ、ああ、そうか!わかんないけど、行ってみよう!」    「あ、ちょっと待って。」      『非常の際にはここを通って避難できます。』と書かれた仕切り板を蹴破ろうとする彼女を慌てて止める。  こんな事情で破ってもし鍵が閉まってたら?    面倒臭いのはごめんだ。      「月子さん、待って、俺が行く。  その板破らないように外側回るから。  鍵、開いてたら玄関開けるから 廊下で待ってて。」  彼女の前に回り、仕切り板の所でフェンスに片足を掛け仕切り板を掴み反対の足で隣のベランダに反転しながら着地した。    彼女の部屋の窓のサッシに手を掛け横に力を入れる。      動いた。      不用心もいいところだが、今日は感謝だ。    「開いた?」      仕切り板から顔を出して覗き込んでいた彼女は、窓が開いているの確認すると、自分もフェンスに足を掛け僕と同じように仕切り板の外を回ってこっち側に飛び降りる。   酔っ払いの癖に危ないったら!  よろけて転びそうな彼女をとっさに支えた。    フワッと彼女の付けている香水の匂いなのかも知れない、甘い香りが鼻孔を刺激する。  感情とは無関係に反応する自分の体に疎ましさを感じながら彼女を離そうとするが、彼女はまだ僕に寄り掛かって、腕は肩に回されたままだ。      「廊下、回ってって言ったのに。」    「はははサンキュ! だって面倒じゃない。」    「じゃあ、もういいよね、離してよ。」    「あ、ねえ!    ちょっと一緒に来てよ、見てもらいたいものがあるんだ!」  
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