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繰り返すキス。
耳に首筋に鎖骨に。
触れる指、辿る唇。
互いの息遣い。
理性が飛ぶ
欲望に支配される。
触れ合う肌。
彼女の上げる小さな声。
エスカレートする体。
白い肌が赤く染まる。
彼女が懇願する。
「お願い―――」
彼女が懇願する。
――――――
「もう。お店に行く時間だから悪いけど……。」
その冷めた口調に衝動に押し流されて自分一人で満足してしまったことに気付き、羞恥に顔が熱くなる。
「ゴメン、俺だけ……余裕無くて‥」
「ふー。ううんいいの、悪いのは私、誘ったようなもんだもの。
あーでも、他の女の子抱く時は相手が感じてるかよく見てね。
時間無くてゆっくり教えて上げられなかったけど…」
「ほかのって…俺は月子さんだから…」
僕の言葉を無視してさっさと着替えだす彼女に、言いかけた言葉を引っ込めた。
そういうルールって訳ね、分った。
身づくろいをし、帰ろうと玄関に行きかけた時、思い出したように彼女が聞いて来た。
「私、最中に何か言った?」
「え?えーと、どうだったかな…。覚えてないや。」
「ならいいの。自分でもよく分らないんだけど、時々おかしいらしいの…あ、肉じゃがとか、忘れないで、そこのテーブルの上に置いてある紙袋だから。」
「これ?―じゃあ貰っていく、ありがと。あ、お前忘れるとこだった、たま。」
「ニャ」
「自分も『たま』じゃない。」
「うつるんだよ。ほら、ここ入って。」
子猫をパーカーの懐に入れ、紙袋を持って外に出た。
玄関ドアに寄り掛かり溜め息を吐く。
彼女は覚えて無い?
「お願い―」と何度も懇願された。
よく聞き取れなかったけど、あれは…
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