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―――鳴り響くアラーム
「もうやめなよ……そんな男!
ねえ…ちょっと待っててくれたらすぐ大人になるから…俺のこと待っててよ、
月子さんが望むような男になるから。」
自分の目から後から後から溢れて来る涙をそのままに、彼女の肩に手を掛け揺さぶる。
彼女はそっと微笑んで僕の頬を拭う。
「優しいね。
私の望む男って…じゃあ先生になってよ。
……学校の先生、憧れの先生がいたんだ高校に…」
「そんな、大学まで行かなきゃなれない……
……月子さん…待つ気なんて無いでしょ…
適当にあしらってるだけだ。」
恨みがましく彼女を睨んで大きく息を吐く。
彼女の夢物語の住人が僕に当てられた役どころだ。それ以上にはどうしたって成れない。
「君の将来、ダメにしたら瑞希さんに怒られちゃう。
怖いんだよね、君のお母さん。
それに…
君に謝って、それから…
さよならを言わなくちゃ…
…もともと出て行くつもりだったんだけど…こうなったから…。」
「さよなら?…」
アラームが頭の中いっぱいに鳴り響く
「なんで……
どうして…… こうなったってなに?」
でも何故か僕はその理由を知ってるような気がする。
「ごめんね。
ありがとうね。」
――――さよなら
月子さんを追いかけなくちゃと思うのに、足が動かない。
行ってしまう。
彼女の輪郭線があいまいになって行く。
待って――
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