「月子」

7/50
前へ
/50ページ
次へ
 「んー、そこから喧嘩になって日頃の不満をお互いぶつけ合って―チャンチャン?」  「はあ――彼より猫を選んだんだ―  今から里親探したら元サヤにならないの?」  「里親になってくれるの!?」    「え?ちょっと待って、もしかして最初からそう言う魂胆で見せたいものって言った訳?!」  「やだ!魂胆って。  それはさ、私がお店に出る時とか、預かってくれるといいなーとは思ったけど…  うん、篤史がうちに来る時とか預かってくれるだけでも何とかなるかも!」  「待って待って!  こっちの都合まるで無視って酷くない?  俺だっていつも家にいる分けじゃないし、母親に食べさせてもらってる立場上勝手な事はできないから。」  「へー殊勝な事言うんだね、食べさせてもらってるって…実の親でしょ?  そっくりだもん顔。」  あー、面倒くさい話になって来た。  「そうそう、殊勝なんです。  足手まといの子供なもんで。  猫はもういいですか。  じゃあ後は勝手にどうぞ。」 「え!ちょっと待って!待っててば!」  さっさとベランダに戻ろうとする僕の腕をおねーさんが追い縋って捕まえる。  「何でそんなこと、言うの?  君のお母さん、楽しみにしてたよ!  『息子と暮らせるようになった』って!」  振り返った僕はまじまじと彼女の顔を見た。 ありえないでしょ。  「嘘じゃ無いって!  お母さんとゆっくり話してみなよ。  あの人、きっと照れやで面と向かって言えないだけだって!」    あの母が?いや無い。  彼女がそう思ったとしたら、会話の流れで一般的な反応をしておいた、とかそう言うことだろ。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

165人が本棚に入れています
本棚に追加