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「海、眺めてるの…?」
「ひっ…!!」
真後ろに立ち、私は砂浜に三角座りしている女の子の肩に手を置いた。
「振り向かないで」
しばらく、そのままの体制で彼女の体に問い掛ける。
「…そう。なるほどね。でも、だったらどうして泣いてるの?」
彼女の体は教えてくれた。
数年ぶりに母と会える。
しかし、心の奥底から泣いている。とてもじゃないが、喜んでいるようには見えない。
それは誰が見ても一目瞭然だろう。
「え…? だ、誰なの…!?」
「Shadowよ」
「しゃどー…?」
驚いた事に、私の存在を知らない様子だ。
「そうよ。こんな夜更けになにしてるの? 早く帰らないと…」
…分かっていた。教えてくれた。
本当は、この子には…
帰る場所など無いという事を。
「……」
「ま…気が済むまで、居ていいんだけどさ……」
可哀相な事を言ってしまった、と即座に前言撤回。
「お姉さん…?」
「ん?」
「お姉さんは…ここでなにしてるの…?」
「人間観察…かな」
これが、私と女の子の、初めての出会いだった。
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