141人が本棚に入れています
本棚に追加
あと少し遅れていたら席の確保は出来なかったであろうというタイミングで食堂に入り、おばちゃんにオムライスを注文する。
熱々のオムライスを恰幅のよいおばさまから受け取ると、先に座っていたいた圭介の向かい側に腰を下ろす。
「ほんとオムライス好きだな」
「違うのだよ圭介。俺は食堂のおばちゃんが作るオムライスが好きなんだっ」
「ごめん何が違うのか理解できない」
「いやだからさ、」
オムライスを食べ始めた俺をチラっと見てからそう言った圭介に、俺は自身のオムライス論を語る。全力で語る。
とろとろの卵についてから、その卵に包まれているチキンライスについて語り出したその頃。
見つめていたオムライスから目を離し、圭介に視線をむけると、やつは俺の話は聞かずに、注文したのであろうハヤシライスを黙々と食べていた。
「ちょっと、ちゃんと聞けよ!俺のオムライス論っ」
「お前のオムライス論とか興味ないし」
「ひどっ」
「…ていうかさ、」
声を低くして、内緒話をするかのように、スプーンを持っていないほうの手を口の横にあてる圭介。つまり左手。
その様子に、俺はテーブルの上に身を乗り出して、圭介の口元に耳を寄せる。
なんの話だろうか。
最初のコメントを投稿しよう!