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「佐藤?」
もうすでに食べ終わっている圭介と特別意味のない会話をしながら、最後の一口を口に運んだその時。後ろから俺の名字を呼ぶ声がした。
俺のことを呼んだんじゃなかったら恥ずかしいなーと思いつつも、条件反射てきな何かによって振り返る。
「…あ、山本!」
数メートル程離れた位置に立って声をかけてきたのは、俺のよく知っている顔でした。
俺が反応した様子をみたその相手は、嬉しそうに笑いながらこちらへと駆け寄ってくる。
俺が突然発した大きな声に、驚いたように顔をあげた圭介は、駆け寄ってくる山本の姿を目にとめると、ああ、と何か納得したように小さく呟き、手元にあったペーパーナプキンを折って遊び始めた。小学生か。
馬鹿丁寧に角と角をあわせて折っていく圭介を眺めていると、突然に視界に視界が薄暗くなる。
それを合図に顔をあげると、隣に山本が立っていた。山本の影で暗くなったのか。
山本と目を合わせるべく、俺はさらに首の筋肉を使って顔をあげる。
俺はイスに座っているから、必然的に見上げるかたちになる。
「いや、立ってても見上げてるけどね」
「圭介、貴様は黙っていろ」
ペーパーナプキンから目は離さずに、唐突に投げてきたその圭介の言葉に、間髪を入れずに俺も言葉をかえす。
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