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「んじゃ」
「おう」
山本はそう別れの言葉を告げると、女の子が見たら卒倒しそうな爽やかスマイルを浮かべて、足早に去っていった。
ああ、俺の想像通りの学校だったらなぁ。山本が笑顔を浮かべた瞬間に黄色い悲鳴の嵐だったはずなのになぁ。なんでかなぁ。なんで顔面偏差値は無駄に高いくせにノンケしかいないかなぁ。
周りから聞こえてくる野太い叫び声やら話し声やらに、思いがけず殺意がわく。
黄色い声どこだよ。萌えるカプどこだよ。あぁ、この前買ったリーマンもののBL小説の続き読みたい。
今読んでいる途中のあの小説、攻めの人がすっごいイケメンなんだよね!メガネなんだよメガネ!メガネ最高!
思い出してにやにやしていると、突然おでこに何かがぶつかった。地味に痛い。
ぶつかってきたものの正体を探すべく視線を巡らせると、オムライスの入っていた皿しかのっていなかったはずのトレーの上に、なにやら白い塊が加わっていた。手に取ってみる。えーと、これは。
「……鶴」
ペーパーナプキンで折られた鶴でした。
そして必然的に、俺のおでこめがけて投げやがった犯人が分かった。いやまあ君意外にいないだろうけどさ。
目の前に座り、ゆっくりとした動作で水を口に含む犯人もとい圭介に視線を投げる。くそぅ。水飲むのさえさまになるってなんだ。
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