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・・・・・・
「じゃぁ、夏休みは怪我のないように過ごすことー。いいなー?」
・・・教室の一番前で、汗を額に浮かばせながら教師が生徒に向かってそういう。
ナツミは下敷きで顔を仰ぎながら机に向かっている。
今日で学校は終わり、明日から夏休みにはいるのだ。
『さよーならぁ』
帰りの会が終わると、生徒たちはいっせいに教室を飛び出していった。
夏休みに入るということで気分が浮かれているのだ。
「ナツミちゃん、一緒に帰ろー?」
ダラダラと机の上で教科書を片付けていると友達がナツミに声をかけた。
「うん、いいよ。」
ナツミは素早く教科書をかばんに入れると立ち上がり、その友達と一緒に歩き出した。
・・・・
「宿題めんどくさいなぁ・・・・。」
ナツミは通学路を歩く最中に何度もそういった。
そのたびに友達が、「そうだねぇ。」と相槌を打っている。
「・・・そういえば、ナツミちゃんは夏休みの間はどこか旅行とかに行かないの?」
ナツミはそれを聞いて、「うーん・・・」と声を漏らした。
「毎年、遠いところへ遊びに行ってたけど、今年は行かないみたい。」
「へぇー、そうなんだ。うちは、温泉旅行に行くってさ!」
「へぇ、いいなぁ・・・。」
ナツミは空を仰ぎながらそういった。
「あっ、そういえば昨日返ってきたテストどうだった?」
友達はそういって、ナツミを見た。
ナツミは「はは・・・。」と苦笑いをしながら、言った。
「良くもなかったし、悪くもなかったかな・・・。まぁ、算数と理科は悪かったよ・・・。」
ナツミがそういうと、友達は「私もー!」といって苦い顔をした。
「お母さんに怒られちゃったよー。このままじゃ、中学生になれませんよー、だってさぁ。」
友達はため息交じりにいい、口先を尖らせた。
・・・中学校かぁ・・・。
ナツミはふぅと、浅いため息をつきながら乾いたコンクリートの上を歩き続けた。
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