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家に帰ると、玄関に見慣れない靴が2足綺麗に並べられていた。
ナツミは静かに靴を脱ぎ、リビングへ向かった。
「・・・・そうそう、昨日返ってきたテスト、うちの子すっごく出来が悪くてさぁ。このままじゃ、中学校のテストも心配よー・・・。」
リビングからは、ナツミの同級生の母親の声がする。
ナツミは戸を少しだけ開けて、気づかれないように中の様子を見た。
丸いテーブルを囲んで、ナツミの母親と、同級生の母親2人がお茶とお菓子を口にしながら雑談をしていた。
・・・今は、昨日のテストの出来の話をしているようだ。
「うちの子は、国語はダントツでいいんだけど、算数と理科がねー・・・。」
ナツミの母親も、半笑いでそういっている。
「うちの子、将来看護婦さんになりたいって言ってるんだけど、今の成績じゃぁねぇー・・・。」
親たちの話をそこまで聞いた後、ナツミは聞こえないようにため息をついてから、今帰ってきたかのように振舞って、戸を開けた。
「ただいまーっ。」
「あら、ナツミ。おかえりなさい。」
「ナツミちゃん、おかえりー。」
「お邪魔してます。」
親たちはそういってニコニコと笑った。
ナツミも軽く会釈をした。
「そうだ、ナツミちゃんは将来何になるか決まってるの?」
ふと、メガネをかけた母親がそういった。
ナツミは「えっと・・・。」と、もごらせた後静かに言った。
「何も決まってないです・・・。」
「あら、そうなのー。」
母親はそういって、目を丸くした。
「大人になるなんて、早いもんよ。今のうちに、しっかり勉強しとかないとね!」
そういって、もう一人の母親が笑った。ナツミは「あ、はい。」とつぶやいて、リビングを去った。
・・・・・勉強勉強って・・・・・何が大人よ。
ナツミは少し不機嫌になりながらも、自分を抑え、二階の自室に向かった。
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