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「では犯人は誰か。犯人は被害者に確実に睡眠薬を飲ませる事ができ、且つ本当の凶器を持っている人間です」
犯人は今も凶器を持っている。なんて大胆不敵な犯人なのだろうか。犯人は春木だと思い込んでいた。しかしそれは今否定された。
「犯人はあなたです。秋山さん」
あろうことか冬川は俺の親友を名指しした。驚愕を隠さないまま俺は無駄だろうと思いつつ反論を試みた。
「睡眠薬がティーカップに混入されていた。ですがそれは確かめる事は出来ない。とっくのとうに洗われているからな。凶器にしたって、一体どこにあると言うんだ」
冬川は口角を持ち上げて答えた。
「凶器ならずっと彼の首に掛っているではありませんか。そのヘッドホンのコードですよ」
「し、しかし。そうだ、例え首に残っているあの跡と太さが一致したとしても、太さの同じ紐なんていくらでもあるだろう」
「太さの同じ紐ならいくらでもあるでしょう。ですが彼女の皮膚片が付着した紐なんて、この世にひとつしかありませんよ」
「うぅ……」
「もういい。夏海」
何も言い返せなくなった俺を、秋山が停めた。
「犯人は俺です。冬川さん」
秋山は諦めてうなだれた。
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