19人が本棚に入れています
本棚に追加
「おおふ」
意味不明の吐息らしいものとともに彼が足を止めたのは出発から5分も経たないうちだった。予想以上に腕と指先に負荷がかかり、たまらず歩みを止めたのである。
駐輪場から家までは、自転車をこいで5分強。徒歩では20分かかる。この調子では帰宅に1時間はかかると思われた。彼は奮起して再び愛車の尻を持ち上げる。
更に5分後。周りの目が気になり、進藤ハルヒトはまたしてもその場にとまった。
(これじゃあまるで自転車泥棒じゃねえか!)
彼のすぐ横を、30代とおぼしきサラリーマンが歩き去った。進藤を横目にしながら歩いて行ったのは言うまでもない。
(泣きそうだ)
さすがに本当に泣きはしないが、そういった心境ではある。
最初のコメントを投稿しよう!