ある秋の殺人

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 私が玄関を開けると長身の男が立っていた。刑事の平田だ。 「夜分に申し訳ありません月島さん。そう思いまして今日は手土産を持参しました」  彼は左手を顔の前に掲げた。紙袋が揺れた。 「今夜は良い月夜でしょう。美しい女性とお月見でもと思いまして」  端正な顔をした刑事は紙袋を差し出した。中には団子が入っている。この刑事は本気で月見をする気なのだろうか。  渋々リビングに案内した。私が茶を淹れてそれを一口啜ると本題に入った。 「今一度事件を整理しましょう。被害者団時雄が発見されたのは二日前の朝八時頃。発見者はあなた。そうでしたね。」  私はまたかという心情を込めてはいと短く答えた。刑事はそれを察したのかこれで最後になると思いますと真剣な目をして言った。鼓動が速くなるのを感じた。 「発見時、被害者は腰から血を流し素人目にも生きている様子ではなかった。その通り、彼は昨日十八時から十九時の間に死亡。我々は強盗事件として捜査開始」  事件現場は私と団の職場である銀行の裏口だった。団は私の上司だ。ところが、と刑事は続ける。 「あなたの同僚の鈴木さん。彼は横領をしていた。団氏はそれを店長に報告しているのです」  鈴木は仕事中に任意同行を求められそれに従った。その場面を私も見ていた。 「間もなく彼の自宅アパート裏の林から包丁が見つかった。被害者の血が付いていた。残念なことに鈴木の指紋はありませんでしたが。自供が取れれば無事解決でしたが」
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