超短編小説集

進藤ハルヒトの悲劇

「取ってこい」

　家に帰るなり彼は家を追い出された。事情を知った親がハルヒトを追い出したのだ。風呂に入る気満々だった彼は、気温１桁の寒空の追い立てられてしまった。しかも裸足にサンダルで。幸いその他の防寒具はまだ着ていた。

（あ、足がー）

　足の指先から徐々に冷たくなるのを感じる。このまま凍傷などになったら、下手したら指を切り落とす羽目になると本気で焦った。埼玉の地方でそんな事などまずないが。

　ダッシュで自転車を取りに行った。

　ちなみに。自転車の後輪は一部分が真っ平らになっていた。今は気にせず乗車しているが、そのうち中のチューブごと交換して金が高くつくことに彼は思い至っていなかった。