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ベッドの真ん中辺りの染みに触れていた冬川は、出しぬけに俺がいつ寝たかを聞いてきた。
「昨日こちらの女性と春木さんが談話室を出たところまでは分かるのですが」
「昨日、あの場にいたんですか」
思い出してみれば暖炉の近くのソファに誰かが座っていた気がする。
「俺はあれから一時間くらい他の奴らと話し込んでいたよ。春木は暫くしてから戻ってきたな」
春木に触れたのは、先程の彼女の怪しい行動を思い出したからだ。その後も様々な質問を彼は重ねてきた。
彼が反応を示したのは、やはり春木の先程の行動についてだった。窓の鍵を弄りながら、冬川は聞いてきた。
「彼女に動機はあるのでしょうか」
俺は迷ったあげく、昨日の昼間、二人が険悪なムードになっていたことを話した。
「秋山と池野さんは付き合っていました。ところが最近、池野さんが浮気しているらしいと聞きつけた春木が注意したようなんです。それで喧嘩に」
「なるほど。相手に心当たりはありますか」
ないと答えた俺は内心ドキドキしていた。この男に言って良かったのかと。
「あなたはもしや殺人だと考えているのでしょうか」
「もしそうだとして、では犯人はどのようにしてこの密室から脱け出したのでしょう」
冬川は不敵な笑みを浮かべて部屋を出た。
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