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「女性のお客様は殆どが夜のお勤めの方で、とても華やかなんですが、その方はホステスさんでもなければ、OLさんでもなく、かと言って主婦と言った感じでもなく、何か、場違いな感じがしました」
…よし。やるじゃないか。さすがホテルマンだ。耳の方はイマイチでも目の方は自信ありか?
「顔は?」
「いや、長い髪で顔が隠れていたので判りません」
…何だよ、褒めると、続かないな。
「服装や背格好は?」
「…全体的に黒っぽかったですね。黒のハーフコートに黒のズボン。黒のショルダーバッグ…背格好は小柄で…コートを着てましたから体型ははっきりしませんが太ってはいませんでした」
「うむ…」
次に、板倉の背広のポケットに入っていた領収書の中華料理店に赴いた。そこまでは徒歩でも行ける距離だった。
ガラスドアから〈満珍楼〉の店内を覗くと、昼時とあって満席だった。
皿を手にした店主らしき男と目を合わせると、手招きした。
迷惑そうな顔をした店主が自動ドアから出て来た。
「お忙しいとこ済みません」
警察手帳を店主の目線に合わせると、俄かに眉間の力を弛めた。
「これ、お宅の店のですよね」
桐生がポケットから領収書を出した。
「…ええ。そうです」
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