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「ええ。昨夜、領収書を請求したのは殺された方の連れの人だけでしたから。それに、テレビのニュースでもやってましたから、直ぐ判りました」
「テレビのニュースを観て、殺されたのが昨夜の客だと判ったんですか」
「いいえ。殺された方の顔は覚えてません。連れの方を覚えてたんです」
「…殺された方の顔を覚えてないのに、ニュースでやってた殺人事件が昨夜のお客だと、よく判りましたね?」
「会話の中に、富山があったからです。“殺されたのは、富山県警の元刑事”って。ましてや、殺されてた場所が目と鼻の先のホテルでしょ?誰だってピンとくるわ」
薄笑いを浮べると桐生を蔑視した。
「…なるほど」
…これこそ、正しく、快刀乱麻のような明解さだ。切れ味鋭く、苦味走ったいい女!吉川君、アキちゃんに負けたな。
「で、連れはどんな男でした?」
「はっきり覚えてますよ。特徴があったので。描きましょうか」
「えっ、描くって、顔を?」
未だ経験のない展開に、ベテランの桐生も面食らった。
「ええ。趣味で絵を描いてますので」
桐生は目の輝きを三島に向けた。
追風に帆を上げる、と言った具合だった。吉川君、上には上が居るもんだな?
「…じゃ、お願いします」
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