第3話

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不思議そうな顔で見つめられて、居心地が悪くなった香織は、助けをもとめるようにマスターを見た。 「皇<コウ>、失礼だろ」 無口なマスターが深みのある重低音を口にすると、皇と呼ばれた男はパッと視線をそらした。 香織は無意識に力が入っていた両肩をおろした。 先に進もうと一歩踏み出すと、カタンと音を鳴らしてグラスを置いた男がおもむろに立ち上がった。 「ここ、座るんだろ?」 耳障りのいい声に、香織がそちらを見ると二つ席をずらして男が座る所だった。 せっかく譲ってくれた席に座らない訳にもいかず、戸惑っているとマスターが声をかけてきた。 「どうぞ」 手で指し示されて、香織はそっとその席に座った。
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