第1話

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「香織<カオリ>!」 後ろから呼ぶ声に長い黒髪を揺らして振り向くと、そこにいたのは先輩で彼氏の篠田誠<シノダマコト>だった。 「どうしたんですか?」 普段会社の中では名字で呼びあっているのに、今日の誠はかなり慌てているためそれを忘れているようだった。 「あの企画案出したのって香織だよな」 突然腕を引かれて、廊下の隅に連れて行かれたかと思うと、誠はそう捲し立ててくる。 普段温厚で柔和な誠が声を荒立てるなんて、想像もしていなかった香織は心底驚いた。 それでも、その内容は仕事の話だったため、背筋をぴんと伸ばして誠に向き合った。 「はい、そうです」 香織がそう答えると、誠は大きくため息をついた。
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