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「香織<カオリ>!」
後ろから呼ぶ声に長い黒髪を揺らして振り向くと、そこにいたのは先輩で彼氏の篠田誠<シノダマコト>だった。
「どうしたんですか?」
普段会社の中では名字で呼びあっているのに、今日の誠はかなり慌てているためそれを忘れているようだった。
「あの企画案出したのって香織だよな」
突然腕を引かれて、廊下の隅に連れて行かれたかと思うと、誠はそう捲し立ててくる。
普段温厚で柔和な誠が声を荒立てるなんて、想像もしていなかった香織は心底驚いた。
それでも、その内容は仕事の話だったため、背筋をぴんと伸ばして誠に向き合った。
「はい、そうです」
香織がそう答えると、誠は大きくため息をついた。
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