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「フン……何がしたい、か…。今は言わないでおくとしよう。」
「何…?」
「まあいいから座れ、『ルシフェル』」
「その名はやめろ。捨てた名前だ。」
「ふっ…そうか。すっかり天界に未練はないようだな。」
「当然だ。俺は望んで天界を去った。未練などあるか。」
そう言い切るルシファーを、面白い玩具でも見るかのような目で見つめるハデス。
「そのお高いプライドも相変わらずか…。少しは何か変わってると思ったがな。」
「……ご期待に添えずすまんな…」
思ってもないことを口にし更に機嫌が悪くなる一方のルシファー。
「それで、わざわざ俺を呼んだわけは何だ。」
「ん?ああ…。ただ顔が見たかっただけだ。」
「何だと…?」
「というのは本当だが別の事もある。……今天界はゼウスの予知の元…ある男を探してる。それも血眼にな。」
「ある男……?」
ルシファーが怪訝そうな顔をすると、可笑しく笑うハデス。
「ルシファー。お前はどうして堕とされたと思う?」
「……何故だ」
「…分からないか。ま、そうだな。真相も知らないんだろう。」
「……知ってどうする。」
「知りたくないのか?」
「………知っていたと思っていた男はとうの昔に死んだ。だからもう真相だのなんだのいい。」
「……知っていたと思っていた男……ソロモンだな。」
ハデスのニヤリという顔に不服を感じながらも、静かに頷くルシファー。軽く睨みつけている。
「…だが、もしソロモンが生きていたとしたら…?」
「何を馬鹿なことを言っている。ソロモンとて人の子だ。あの時確かに死んだ。……甦るとでも言うのか?」
「違う。それは無い。だが…もしの話だ。」
ハデスの言い方が妙に引っかかる。何を言いたいのかこの男は……。
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