第5話 輪島浩二編②

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「よし、とりあえず簡単に打ち合わせよか。そんで、音合わせしようや」  セイタの一言で、全員我に返った。  俺たちは、ハルクのライブ終盤に乱入、3曲歌わせてもらえることになった。3曲とも、半年前まではライブで必ず演奏していた曲だ。 「コウジ~、ちゃんと覚えとるか?」 「アホ、何千回歌った思うとるん」  セイタに言い返したものの、やっぱり少し不安だ。  歌詞も譜面も頭に残っている。死ぬまで覚えている気がするくらい、はっきりと。  ……けれど、指はちゃんと動くだろうか。  前みたいに。  表情に出したつもりはなかったが、俺の不安を読み取ったのか、セイタが俺の肩を叩いた。 「ま、本番、お前がミスっても俺らの神テクでごまかすから安心しろ」  ヒサはにやにや笑っている。  タローは無表情だけど。  ……こいつらとなら、大丈夫だ。  俺は何回か頷いたあと、ギターケースからギターを取り出した。 「とりあえず、やろうや」
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