第5話 輪島浩二編②

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 各々楽器を確認する。俺もギターのチューニングをした。  ハルクたちが見守るなか、配置に着く。  ヒサが軽くドラムを叩く。セイタはベースの、タローはギターの弦を弾く。  俺がちらっとヒサを見ると、ヒサは笑顔で頷いた。  ……ああ。  久しぶりなのに。  どうしてこうも、息が合うんだろう。  半年分の鬱憤をぶつけるように、全員がそれぞれの音を放つ。  その音の重なりに、声を乗せたとき。  ……大丈夫。  声は裏返っていない。  思いっきり歌えている。  涙がこぼれたのは最初だけ。  そして俺の指は、以前と同じように弦を抑える。イメージ通りに。  ……気持ちいい。  このままずっと、演奏していたい。
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