第5話 輪島浩二編②

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「え、え、え」  何これ。  いったい、何が起こっている?  この、掌の上に乗ったモノは何だ?  爪先からガクガク震え始める。  もう一度股間を見て、俺は小さく悲鳴を上げた。  震えのせいで立っていられない。茶色いマットの上に尻もちをついた拍子に、右手から黒い塊が落ちた。塊は砕けて、黒い破片がクリーム色の床に散った。 「な……」  痛みはない。  ただ、息苦しい。  俺は胸のあたりを抑えた。  どうすんだ、これ。  医者か? 医者に行って、これ、どうにかなるのか?  これからトイレはどうするんだ。いや、そういう問題なのか?  突然、性器が腐りました。  誰にも言えねえ!  てか、何で、何で、何で!?  頭を抱えた拍子に、左手の指が元に戻ったことを思い出した。  左手が元に戻って、バンドにも復帰が決まった。  ……夢を、もう一度、見ている。
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