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失っていた記憶を取り戻したあたしは暗く静かな家の中に入り、明かりをつけて回る。
ある部屋には畳の上に丸い卓袱台。襖の中には布団が何枚か入っている。
またある部屋には、よく着用していた陽真理特製の赤巫女服がかかっていたり。
その他風呂場や台所と、一人で暮らすには十分過ぎる広さの家を保有している。
しかし、しばらく家を開けていたはずなのに埃がない。
それどころかあたしが持っている衣類も全て綺麗に収納されていた。
(陽真理がやってくれたのかしら?)
この家の周りには妖怪用の結界と人間用の結界の二重結界を貼っている。
当然天乃も陽真理も本来入ることは出来ない。
だが、あたしがあらかじめ渡しておいた札があれば簡単に入ることができる。
まぁお札はあと何人か渡してあるけど、気まぐれで現れる奴らだから掃除なんかしやがらないはず。
恐らく可能性としては陽真理が高いので敬意と感謝をしつつタンスを閉じた。
「さて、問題はご飯の方ね」
あたしのことだ。食糧自体あるかどうか怪しい。いやある方が怪しい。
恐る恐る台所に向かい、米倉をそっと覗き見る。
(……嘘でしょ?)
結構な量の米が保管されていた。
続けて野菜も隣のザルより確保。肉もさっきとったんじゃないかと思える程のいい状態で貯蔵庫より発見した。
ここまできてあたしは思った。
(なんかあたしの家じゃないみたい……)
自慢じゃないが食糧に関してはかなり疎い。いや、疎いなんてもんじゃない。
なくなったのが前日でもその次の日に買い出しとかする。
二日くらい平気で抜くしね。買いに行くのメンドいのよ。ここほらだって山だし。
買いに行こうものなら山降りなきゃだし。
とりあえずあるものは使わせてもらおうじゃない。というわけで、早速調理し始める。
せっかくこれだけの食材があるんだし、鍋でもしよう。
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