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花菜も思わず身を乗り出す。
男子の品評は、やはり盛り上がるものだ。
「あった!」
早智の言葉に、ふたりともケータイの画面に見いる。
「……うん、私は樫原先輩がいいな」
「……やっぱ、頭よさそうだね」
ケータイには、3人の男子が写っていた。若干ふくよかで、明るそうな男子とメガネをかけたいかにもな優等生。
花菜はもうひとりの男子に釘付けになる。
「この子……年下?」
「よくわかったねー。ひとり中学の後輩連れてくるって言ってた。なんかね、うちのガッコに入ろうと思ってて、見てみたいんだって」
「この中では一番モテそうだけどね」
美妃が早智にケータイを戻す。
短くカットされた髪に、通った鼻筋。まだあどけなさはあるが、中学ではモテるだろう。
花菜の脳裏に、あどけない、まだ小学生の少年の顔が浮かび上がる。
似てる。
まさか、そんな偶然あるわけない。
会ったのは5年前だ。変わっていて、わかるはずがない。
「……早智。この後輩の名前……わかる?」
早智がきょとんとする。
「え?名前はちょっとわかんないな。永島に聞けばすぐだよ。聞いとく?」
「なに?花菜の知ってる子だった?」
「ううん、いい。なんとなく、似てるかなって思っただけだから」
本音は、すごく気になる。
もし名前を聞いたら、向こうも理由を知りたがるだろう。
彼が自分の名前を知っているはわからない。だが、彼の母親は確実に知っているはずだ。
彼があの少年だとして、自分の事をどう説明する?
彼は花菜の顔を覚えていないだろう。一瞬だったし、あの時は彼の父親の葬儀だった。それどころではないはずだ。
どちらにしろ、会うには心の準備が必要だ。
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