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「向こうは私の事を知ってるんだよね?」
「もちろん?」
花菜は緊張した面持ちになる。
会ったことはないが、存在が疎まれれるのはやはり嫌だ。
お父さんはお母さんと別れた後、別の人とお見合い結婚したらしい。
「どう思ってるの?」
「うーん、お母さんも奥さんときちんと話した事ないしね。くわしい事はわからないけど。葬儀にはできれば花菜も連れてきてほしいって。もちろん、花菜がよければだけど」
「行きたい!」
「ほんとに?」
お母さんはほっとした表情になる。
おそらく行ってほしかったのだろう。
「あ、でも……息子さんがいるんだけど、息子さんに花菜の事をまだ知らせてないみたいで。その子には言わないでって」
「……息子?」
「そう。あなたの腹違いの弟」
お母さんが微笑む。
「いっこ下みたいよ」
どきどきした。
弟。
お父さんに会う時もどきどきしたけど、それ以上かもしれない。
どんな子だろう。
少し楽しみだった事を、後で後悔する。
自分が浅はかだった。
一回だけ会っただけの父親。
死んだって言われても、実感なんてない。
病気だから、一度でも会いたかった?
何を今さら。
いつでも会いに来れた。市内に住んでるくせに。
会いに来なかった。
お父さんに抱くのは、決してよい感情ではなかった。
だから、悲しいとかはない。
そして自分は、期待してしまったんだ。
弟とは、家族みたいになれるんじゃないかって。
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